コラム:弁護士の失業

2011-05-16

かつて弁護士は、難関の司法試験を突破し、法律の専門家としてあこがれの職業であった。少なくとも私が、弁護士として仕事をスタートした1995年当時はそうだった。ところが、今は、弁護士資格を取得しても就職先がないという事態が数年前から社会問題になっている。

もちろん資格があればいつでも登録・開業できるのであるが、頼む方としては、一生を左右するトラブルを新米の弁護士に依頼しようという気にはなかなかならない。

一般的には、弁護士は給与を保障されながら法律事務所で経験を積み、その中で自分の技量とクライアントを獲得していく(事務所で給与をもらいながらオンザジョブトレーニング=OJTを積む弁護士を居候弁護士=イソ弁と業界では呼んでいる)。

しかし、2004年から、司法試験制度が変わり、旧来の司法試験制度と並行してロースクールを卒業して法曹資格を得る道が開かれた(新司法試験)。当初は、医師国家試験と同じようにロースクールを卒業したら8割~9割が司法試験に合格する構想であったが、生き残りをかける大学ではロースクールとその定員が乱立したため、今は20%強の卒業生しか合格できないという深刻な矛盾が出ている。

この司法改革は、規制緩和の一環で、弁護士も市場競争にさらされる中で、サービスの向上が図られるという考えのもとで導入された。確かに、弁護士がその特権にあぐらをかいて市民サービスに消極的だった面があることは否めない。しかし、競争の結果被害を受けるのは市民であることもこの司法改革の重大な矛盾である。就職先のない弁護士は、事務所に無給で机だけ置かせてもらうか(軒を借りるという意味で「ノキ弁」と言われる)、いきなり自宅やオフィスを借りて独立する(即独立した弁護士という意味で「ソクドク弁護士」という)しか道がない。市民は、手術をした経験のない弁護士の実験台にされることになる。

生まれた時代が違うだけで、人権や社会正義にためにいい仕事をしたいという志をもった後輩たちが、苦労している姿を見るのは本当に痛々しい。そんな後輩の事件や就職の相談がわが事務所には集まってくるのだが、全員を事務所に迎え入れるほどの力は私にはない。

4月に、弁護士業務研究所(略称「ベンラボ」)と社団法人を仲間と一緒に立ち上げた。事務所の枠を超えて、駆け出しの弁護士の相談や研修、事件の共同受任(OJT)、経営のノウハウを共同研究しようということを目的とした組織である。

市民には、弁護士が増えたと言ってもあまり実感がないだろう。「弁護士とは自分の人生に関係のない存在」「できれば関わりたくない人」という意識が大半であるし、必要と感じていても、「いい弁護士がいない」「気軽に相談できる弁護士に出会ったことがない」という人がほとんどであろう。いい弁護士が増えることは、市民の潜在的ニーズであり、いい弁護士が増えれば泣き寝入りしている権利が実現できる可能性は広がる。弁護士の数が増える中で旧来の狭いパイを取り合うのではなくて、仕事(市場)を創造する中で、新しい弁護士業務のモデルをつくることが今、法律事務所に求められている。

(文責:原和良)

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