コラム:人権弁護士の生き残りをかけた取り組み!?/指宿昭一弁護士(暁法律事務所)

2011-12-01

◯司法修習生の35%が就職未定の時代

私が司法修習生(60期)になった2006年4月頃は、まだ、「即独」「軒弁」という言葉は一般的ではなかった。私は、当初から即独志望だったが、「即独」「軒弁」という言葉を初めて聞いたのは前期修習が終わる6月頃だったと記憶している。60期は、新旧の司法修習が初めて重なるため、その就職の困難は「2007年問題」と言われ社会問題になっていた。実際、修習修了時に就職が見つからず、弁護士登録時期を遅らせた同期弁護士を何人かは知っている。

 

しかし、今から考えると、当時はまだまだ牧歌的な時代だった。事務所経営のことなど何も考えずに立ち上げた我が即独事務所も、最初の2年間はそこそこ順調だった。3年目、4年目となるにしたがって、事務所経営はどんどん苦しくなってきている。困難で訴額の少ない事件の相談は沢山来るが、事務所を維持できるような事件の相談は激減している。修習生の就職問題の深刻さも、私たち60期の頃とは比べものにならないほど深刻化している。12月に登録予定の64期の35%の就職が未定だという。しかも、就職が決まったとされている65%の中には、即独、軒弁、宅弁もいるはずなのだ。

◯東京支部での議論からベンラボ設立へ

青法協東京支部では、弁護士激増(増員)問題について、例会や合宿で何度も議論をしてきた。支部には、私のような弁護士激増反対派もいれば弁護士増員賛成派もいる。制度論では、なかなか意見と方針が一致できないのが現実だ。ただ、この時代に、青年法律家が人権活動に取り組みながら、生きていくことができる仕組みを作らなければならないということでは一致していたと思う。支部としても、メーリスを通じた新人サポートシステムを作り、これから稼働させていこうとしているところである。

 

もう一つの取り組みが、ここで紹介するベンラボである。私は、原和良前支部長から「新人弁護士をサポートする団体を立ち上げたいので一緒にやろう。」と声をかけられ、この問題に熱意を持っている経営コンサルタント向展弘氏を紹介された。実は、当初は、「自分がサポートしてもらいたいくらいなのに、そういう団体の活動に割く時間は取れそうにない。」というのが本音だった。また、その頃、私は「人権弁護士、労働弁護士は、事務所経営のことなど考えずに、自らの信念を貫いて活動していけば、結果として何とか経営は成り立つはず。」という考え方をしていたし、「経営コンサルタントって、うまいことを言って沢山お金を取る仕事でしょ?」という偏見を持っていたので、あまり近寄らないようにしようと考えていた。

 

ところが、自分の事務所の経営上で色々と問題があり、向氏に相談して解決の方向が見えたことにより、考えが変わった。「人権派弁護士こそ、経営の戦略・戦術を明確にして、事務所経営を健全に行うべきだ。」と考え、自分自身が学びながら、新人・若手・それ以外の弁護士と共に、事務所経営を改革する団体を作ろう。」ということで、この団体の立ち上げに加わった。

◯未来の弁護士のあり方を真剣に考えるコミュニティ

ベンラボの正式名称は一般社団法人弁護士業務研究所で、弁護士のサービス向上を支援する非営利法人である。成長意欲の高い弁護士が集まり、未来の弁護士のあり方を真剣に追及するコミュニティをめざす。発起人は、原和良弁護士、向展弘コンサル、私である。
吉田悌一郎弁護士にも理事に加わって頂き、今後、社員を募集していく予定である。
年内に弁護士のためのお悩み相談会を3回開催し、来年から本格始動する。

 

活動の柱は、
 ①メンバー同士の共同受任の機会の提供
 ②スキルアップグループ勉強会
 ③コンサルによる個別相談、研修、ビデオセミナー
を考えている。

 

興味のある方は、私まで問い合わせを(ibu61@nity.com)。

 

文責:指宿昭一弁護士(暁法律事務所)

 

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